Report-004 of kawani@koganei

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『西神田の集まり』-1982年~1985年の記録

-松山俊太郎さんの連続講義を始まりとして-


 
 80年代初頭、東京の西神田にあった古いしもた屋の二階で毎月一回土曜日の夜に開く「集まり」があった。


 始まりは、印度哲学の松山俊太郎さんを招いて話を聞く集まりだったが、ほかにも様々な方にお願いして話をしていただいた。
 
 秋山清さん(詩人)、浅川邦夫さん(画廊春秋主人)、今泉省彦さん(画家・美学校校長)、井出文子さん(女性史研究家)、風倉匠さん(美術家)、亀和田武さん(作家)、川仁宏さん(編集者・パフォーマー)、川上ナオミさん(オーガナイザー)、國吉和子さん(舞踊評論)、松澤宥さん(美術家)、など、そのほかゲストには古澤栲さん(パフォーマー)、木村威夫さん(映画美術監督)もいらした。(*肩書きは当時のものですでに亡くなった方もおられます)
 
 「集まり」の主催者はその家の主人川仁俊恵さん(画家)、毎回おいしいサンドイッチとつまみ、飲み物をたっぷり用意してくれた。企画と連絡裏方は白澤唯司/吉利が担当した。


 「集まり」のプランは80年頃から俊恵さんと相談を始めていたが、準備がなかなか整わず、ようやく決まったのは82年も開けた2月26日の土曜日で、第1回目は松山さんの講義『愛について』から始まった。


 プライベートな小さな場所での集まりでもあり、あまり堅苦しい雰囲気にしたくなかったこともあり、会の名称は付けぬままスタートした。


 当初の聴講者には俊恵さんと相談して案内を出した。7~8名ほどの集まりだったが回を重ねるごとに口コミで徐々に増えてきて、常連は12~3名を越えていた。


 講義の内容も豊かで刺戟的であったことは勿論だが、俊恵さんの作ってくれる美味しい料理も魅力だったのは間違いない(会費は集めていたが、運営費はいつも赤字モチダシ!)。


 時には20名を越えることもあって木造二階屋の床が抜けないか心配になった。この家、元はといえば現代思潮社の編集部があった家で、編集部が小日向に越した後を借り受けて、その当時編集長だった川仁(宏)さんが、息子の央ちゃんと親子三人で暮らしていた。


 その時には事情があって川仁(宏)さんは既にこの家には住んでいなかったが、名前を挙げたら切りがない程たくさんの人たちが集まっていた場所なのだ。


 「集まり」の始まった頃はサロン的だとかの風評も聞こえていたが、まったく気にせず、雰囲気も変えなかった。講義が終わると、たっぷりのサンドイッチと美味しい何品かの料理が出て来て、焼酎の一升瓶をどんと真ん中に置いて各自勝手に飲んだり食べたりしていた。


 みんな一緒に食べたり飲んだりすることが、その場をすっかり和ませて、講師と聴衆という垣根を相当低くしたはずだ。閉会の時間を決めないで、それぞれの人の終電の時間までで良い、と云う俊恵さんの海の様な許容力のおかげで、質疑応答から話がさらに盛り上がったし、普段聞けない話や気を抜いた話にもなって夜中に大笑いすることもたびたびだった。そのうちに、話を聞いていて終電を逃した人が出たりしてとうとう始発電車まで居残りと云う事態が、だんだんと常態化していった。


 楽しい話に酒も進むのは当たり前で、俊恵さんのストック酒を毎回頂戴していた。事情を知っているメンバーは飲み物(主として酒、だが)や食べ物を差し入れてくれたし、運営・裏方も田村治芳(編集者・古書店主)くんが手伝ってくれた。


 講義の記録はテープに録音したが、貸し出したまま残念ながら行方不明のテープもある。講義を聴きっぱなしではあまりに惜しいし、その一部でも文章化して残したいと云う思いも少しあった。


 集まりも2年ほど経ったころ、松山さんの初期の数回分の講義テープを文字起こしすることにした。田村治芳くんと集まりメンバーの室野井(洋子/舞踏家)さんにも相談して、三人で何とか原稿らしき物に仕上げた。


 松山俊太郎さんに原稿を見せて小冊子に仕立てたいと話をしたが、駄目だと一蹴されてしまった。いい加減な小冊子など出版したくなかったのだろう、話し言葉の文体も気に入らなかったようで、コピーもせずに渡した原稿は戻ってこなかった。その後数年経ってきちんとした出版社から松山俊太郎さんの本が出た。話し言葉の文体だった。


 名前を挙げた方々の講義を身近に聞けたことは、今にして思えば勿体ないような、貴重な楽しい時間だった。その一回一回の思い出を書き出したらそれこそ切りがない。「こんな楽しい集まりは永久に続いてほしいね」と松山俊太郎さんは言っていた。


 丸々4年もよく続いたなあ、と思う。たった4年か、とも思う。全て、川仁俊恵さんのおかげである。
                                                                                                                              2010年5月 白澤吉利
 以下に、その「集まり」の全記録を書き出しました。
 

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期 日 講  師 主  題 備  考 T/No
第1回 ’82. 2.26 松山俊太郎-第1夜 「愛について」
-知ること、見ること

1本
第2回 3.26 松山俊太郎-第2夜 愛について」
-「愛」の言語学的考証

不明
第3回 4.23 松山俊太郎-第3夜 「愛について」
-テキストを読んで
テキスト/ホーフマンスタール『騎士バッソンピエールの冒険』 1
第4回 5.21
メンバーミーティング 今後の希望など
第5回 6.25 松山俊太郎-第4夜 印度教に於ける宇宙・世界-阿頼耶識に触れて
1
第6回 7.28 ミス・ジュンコ 米国西海岸に在住の
日本人事情など


第7回 9.28 松山俊太郎-第5夜 「都の恋、鄙の恋」
-印度古典詩から
テキスト/古典詩抜粋コピー 2
第8回 10.22 松山俊太郎-第6夜 「美について」
-夢の話から

2
第9回 11.7
川仁俊恵
・展覧会パーティー
松澤・川仁・対談
延期のため

第10回 11.26 松山俊太郎-第7夜 自由と権利と義務
について

2
第11回 11.29 松澤  宥
-対談-
川仁  宏
美術と言葉の間に 対談の前に松澤宥の声による美術
作品の発表あり
2
第12回 12.17 松山俊太郎-第8夜 「豊饒の海」から
-三島由紀夫について
テキスト/

12.30 BONENKAI’82
参加者10名
第13回 ’83. 1.22 松山俊太郎-第9夜 「夢の浮き橋」
-谷崎潤一郎
テキスト/
夢の浮き橋

第14回 2.26 松山俊太郎-第10夜 タントラ-創造模型と
時の重視
スライド映像を
見ながら

第15回 3.26 松山俊太郎-第11夜 タントラ -2 スライド映像を
見ながら

第16回 4.30 浅川邦夫 浅川邦夫を包囲
(むかえ)て
萬 鉄五郎の話
など

第17回 5.28 松山俊太郎-第12夜 印度の神話と象徴 テキスト/
別製資料

第18回 6.25 秋山  清 「小組のへそ」
-開かれた男と女の関係
テキスト/別製
資料集・大杉栄と
堀保子の文章など

第19回 7.30 松山俊太郎-第13夜 印度の神話と象徴
-第2回


第20回 8.27 秋山  清 小組のへそ-開かれた
男と女の関係 -2
テキスト/別製
資料集

第21回 10.1 松山俊太郎-第14夜 稲垣足穂
-カフェの開く途端に
月が昇った


第22回 10.29 浅川邦夫 浅川邦夫を包囲
(むかえ)て -2
-抽き出しと把手・対談
/今泉省彦


第23回 12.3 松山俊太郎-第15夜 「潜航艇『鷹の城』」
小栗虫太郎
-推理作家になりそこねた人
テキスト
/現代教養文庫
・社会思想社刊

第24回 12.18
十二のプール メンバー
ミーティング

第25回 ’84. 1.28 松山俊太郎-第16夜 21世紀への展望
-人類に未来はあるか


第26回 2.25 松山俊太郎-第17夜 1940-2000
-回顧と展望

第27回 3.24 亀和田武 1964年に於けるTOKYOの変容  -JFK、力道山、
そして和製ポップスの死

第28回 4.28 松山俊太郎-第18夜 自由と因縁
第29回 5.29 秋山清-松山俊太郎 秋山さんと松山さんの
話を聴く

第30回
休止



第31回 7.28
松山俊太郎-第19夜 水について
第32回 9.22 秋山清-井出文子 昭和初期の
女性運動家たち
-ゲスト・井出文子
テキスト/
第33回 10.27 松山俊太郎-第20夜 「可哀相な姉」渡辺温
-を読む
テキスト/
渡辺温全集’70
薔薇十字社版
 第34回 11.24 井出文子 女性運動の先駆者達
-「婦人戦線」発刊の
前後から
テキスト
第35回 12.22 松山俊太郎-第21夜 「愛」-平凡社百科事典の[あい:AI]の項目より BONENKAI
第36回 ’85
1.26
今泉省彦 60年代の美術をめぐる
事件と現在

第37回 2.23 松山俊太郎-第22夜 リラの香りのする手紙
-妹尾詔夫
テキスト 不明
第38回 3.23 今泉省彦 60年代の美術をめぐる
事件と現在-第2回

2
第39回 5.18 今泉省彦 ‘批評’
第40回 6.15 松山俊太郎-第23夜 柊雨堂夜話-木々高太郎 テキスト/ 2
第41回 7.5 川上ナオミ TALK SESSION N.Y.のオルタナ
音楽事情など
3
第42回 8.29 風倉  匠 パフォーマンスの源泉 ゲスト・古澤栲 4
第43回 9.28 松山俊太郎-第24夜 宇宙と神々の象徴
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インドの美術


第44回 10.26 國吉和子 「踊る愛人」シリーズ
その一
・壮吉と八重次
荷風と藤間静枝(のちに藤蔭静枝)のことなど 3
第45回 12.28 松山俊太郎-第25夜
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インドの美術 -2
BONENKAI